ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
人種とスポーツ 黒人は本当に「速く」「強い」のか
川島 浩平
近年、陸上短距離界でのジャマイカ選手の躍進などにより、黒人の身体能力への関心が高まっている。実際に、近年の世界大会において、男子100mの決勝に進んだ選手はすべて黒人であり、NBA選手も8割近くが黒人である。本書はそうしたことを学術的観点から明らかにしようとするものである。
大学教授である筆者の研究成果および国内外の学術論文による知見がふんだんに盛り込まれており、奴隷制や人種差別などの歴史的背景や文化的背景から慎重に読み解こうとするものである。
この手のタイトルによくある、「骨格が…」や「日常生活で走る量が」といった一面的な背景から書かれたものではないため、答えを急いてしまうと少し退屈するかもしれない。しかしながら非常に読み応えがあり、多方面からの考察と事実に基づいた豊富な知識を得ることができる。そしてあとがきにあるように、「人種と知能」という面にも同時に答えようとしている。
黒人に対して身体的な偏見を持ちがちな我々にとって、非常にバランスのとれた見方を提供してくれる一冊である。
(山下 大地)
カテゴリ:身体
タグ:人種
出版元:中央公論新社
掲載日:2015-04-28