ATACK NET ブックレビュー
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がんを告知されたら読む本 専門医が、がん患者にこれだけは言っておきたい“がん”の話
谷川 啓司
がんを患っていない私が本書を読んでも、本当にがんを告知されて本書を手に取る方とは同じ感情では読めていないだろうと思う。
私は鍼灸師として勤め、がん患者の心身のケアを行っている。だからこそ本書が訴えるがんの心構えも理解できる。それだけでなく、私がまだ小学生のとき、家族ががんを宣告され、その闘病生活を目の当たりにした。そして数年後には死別を経験している。だからこそ、がんを宣告された人の家族の気持ちも分かる。
だがしかし、まだ分からないのはがん患者本人の気持ちだ。何人ものがん患者を見てきており、気持ちも分かってあげたい。もちろん共感の気持ちを持って接しているが、私が理解したはずの患者の気持ちと、患者本人の気持ちには方向性の違いはないにしても、そこには雲泥の差があるように感じる。むしろ私が出会っているがん患者達は、すでにがんに対する心構えができている方がほとんどである。だからコミュニケーションも取りやすいのだ。
この著者のように、がんに詳しい医療従事者が、がん宣告を受けたら、すぐにでもがんとの向き合い方が分かるかも知れない。だが、全く知識のない一般の方ががん宣告を受けたときには冷静に本書も読めず、苦しむ期間が長いのではないだろうか。しかし、本書から言わせたら、その苦しんでいる期間が免疫を低下させ、がんを進行させる一助になってしまうと言うことだ。
私の家族の状況を見て、私もがんになる確率は低くない。将来の不安もある。けれども、がんの告知をされていない私は本書を冷静な状態で読むことができた。本書のタイトルには告知されたら読むとあるが、がん宣告を受ける前に本書を読むのが最善だ。もし興味がない内容でも簡単に書かれた本書は読みやすい。そして、日本人の一番の死因であるがんについて早々に興味を持ってもらいたい。つまり早いうちに多勢の方に本書を読んで頂きたい。事前に読んでおく事でがんがそこまで苦しいものではないと理解できる。そして、がん治療にはその理解が不可欠と知らされる。
同時に、本書を読んだことで伝えることの重要性も理解した。トレーナーとして幅広い世代に指導することがあるので、そういった場面で健康について、ケガについて、病気について
(橋本 紘希)
カテゴリ:医学
タグ:ガン
出版元:プレジデント社
掲載日:2015-11-09