ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
遺伝子 vs ミーム
佐倉 統
著者は理学博士で、もともとの専門は進化生物学だが、科学史や科学論の領域に焦点を移し、生物学の理論受容史や科学技術と社会のあるべき関係を探索中とのこと。
「ミーム(meme)とは、文化的情報の伝達単位である。生命情報の単位が遺伝子であることからのアナロジーとして連想されたもので、言い換えると、文化システムを生命システムからのアナロジーで記述するための基本的な概念である」(P.13)
この概念は「利己的遺伝子」で知られるR・ドーキンスが考えたもので、批判もある。だが、ここでは著者のこの言葉を引用しておきたい。
「ぼくはミームという概念の有効性は、定量的な記述や予測などではなく、比喩やアナロジーにもとづく問題発見能力にあると思う」(P.214)
物を考える視点(あるいは技術)はいくつも持っているほうがよい。学問もスポーツもミームに満ち溢れている。簡単に読めるようで、考えるところが多く残される本である。
新書判 230頁 2001年9月1日刊 1000円+税
(月刊スポーツメディスン編集部)
カテゴリ:生命科学
タグ:遺伝子
出版元:廣済堂出版
掲載日:2001-11-15