ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
運動の「できる子」にする! 12歳までに取り組みたい89のトレーニング
立花 龍司
この本は、運動をする上で重要視されている、股関節、体幹、肩甲骨周囲(肩甲上腕関節を含む)などのトレーニング種目が主に紹介されている。その他に、著者の専門分野である野球の肘障害予防に重点を置いた運動メニューや、バランス力アップの種目など内容は多岐にわたっている。
紹介されている種目は、現在活躍中のスポーツ選手も行っている内容が数多く紹介されていて、ジュニアが行うには難度が高いと思われるものもある。
種目や年齢に関係なく、スポーツ指導を経験した人や自ら運動をしている人たちが、指導上、あるいは活動していて課題を感じたことがある内容をすべて克服できる様に種目を網羅しようという熱い気持ちが伝わってくる著書である。
「12歳までに取り組みたいトレーニング」という副題と内容から推察すると、日頃、著者が指導上困っている内容を読み取れる。その一つに、キャリアがある選手も、著書に紹介されている内容を十分にこなすことができないという指導局面が想像される。
そのような問題を克服するためには、早い年代でこれらの動きを習得することで著書の考える次の段階のトレーニングに進むことができ、スポーツ選手のレベルアップにつながると考えているのだろう。本書を通じて、一貫指導を目指してるのだろう。
ただし、紹介されている種目は各関節を中心にした単関節運動に近いものがほとんどで、動きの全体的統合といった視点では疑問が残る。あくまで、ある部位の力発揮と可動性を求めているだけとも言える。よい運動選手になるためには、身体運動全体の統合や本書には掲載されていないパフォーマンス前提条件も必要であるといったことも紹介すると親切な内容になり、ジュニア育成の考え方を広めることができるのではないかと考える。
そうはいっても、各部位の種目例が豊富にまとまっている著書は、なかなか見つけることは困難なので、一冊手元にあるとプログラム作成のよい資料になるといえるだろう。
(服部 哲也)
カテゴリ:トレーニング
タグ:野球 指導
出版元:東邦出版
掲載日:2016-07-02