ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
米国アスレティックトレーニング教育の今
阿部(平石) さゆり
勤務先の施設や学校などで、『月刊トレーニング・ジャーナル』を購読されているところも多いのではないでしょうか。私もその一人で、時間を見つけて仕事帰りに読んでいましたが、なかなか自宅のようにゆっくり読みたい記事を読みきることできずにいました。中でも、毎月楽しみに読んでいた阿部(平石)さゆりさんの連載が、今回一冊の本になったと聞いて「これでじっくり読める!」と嬉しくなったものです。
内容は、エビデンスに基づく実践の話から、現場で求められる救急力、脳振盪、アスレティックトレーナー(以下、AT)としての生き方の話まで多岐にわたっています。
どのトピックに関しても情報のソースと筆者の見解の区別が明記されていて非常にわかりやすく、読みながら思考がどんどん活性化されていくようなテンポのよい文章です。
現在日本人でアメリカのATの資格を保有している人は500人以上いるとも言われていますが、卒業年度が数年異なるだけで学ぶ内容や業界のトレンドが次々とアップデートされているような、非常に変化が早い世界です。それに加えて人々の生活も、テクノロジーの利用の仕方も、ひと世代前にアメリカで学生生活を送っていた人たちの頃とは大きく変わっていることでしょう。これだけ変化が早い世界において、アメリカのアスレティックトレーニング教育現場の文字通り最先端の情報を、これほどまでに的確なメッセージとして日本語で届けていただけることは、日本にいる私たちにとってはとても貴重なことだと思います。筆者のまえがきにもあるように、「今」のアメリカでのAT教育や、現場がどう機能しているかを切り取った本書は、まさに「今」読んでおくべき情報源です。
読者がどんな資格を持ち、現在どんなセッティングで働いているにせよ、本書にはアンテナにひっかかるトピックがひとつはあると思います。教科書としてレビューする本というよりは、気になる情報に関して参考文献を引っ張ってきてさらに知識を深めたり、同僚や同業者と意見交換をしたり、次の行動や会話を生み出すきっかけとして活用すべき書籍です。
(今中 祐子)
カテゴリ:アスレティックトレーニング
タグ:留学 スポーツ医科学 救急救命
出版元:ブックハウス・エイチディ
掲載日:2017-07-19