ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
アレクサンダー・テクニーク完全読本
リチャード ブレナン 青木 紀和
アレクサンダー・テクニークというものを初めて知ったのは10年ほど前。当時何冊か読んだのですが、アレクサンダー・テクニークについて音楽家や舞踏家のためのボディーワークであると認識していました。それを人に言ったらお叱りを受け、アレクサンダー・テクニークはもっと哲学的で精神的でいろんな要素を含んでいるといわれました。
そのころ読んでいた本は、確かにアレクサンダー・テクニークの部分的な要素を取り上げたものであったとは思いましたが、哲学的とか精神的なと言われても想像もつかず、つかみどころのないイメージが私の頭の中に残りました。
タイトルの通り本書は「完全読本」。つかみどころのないものがつかめるかもしれないという期待で読んでみました。
期待通りに私の中でのアレクサンダー・テクニークで欠落していた要素がしっかりと書かれていました。逆に見えてきた分だけアレクサンダー・テクニークが目的とすることの難しさや奥行きの深さを感じました。
身体面・感情面・心理面・精神面と、まさに心と身体における様々な要素に作用するワークだと認識を新たにしました。
だから方法論も正しい身体の使い方という面に対するアプローチではなく、メンタルとフィジカルを不可分一体と捉えた上のワークになっているようです。どちらかといえば瞑想に近い感じもしました。近年、マインドフルネスやヴィパサナなどの心理や精神世界のワークも多く見かけるようになりましたが、そこに解剖学や運動学の要素がミックスされたような印象を持ちました。
多くの人が自分の思う通りに身体を使えていると信じて疑わないでしょう。ところがその中に不必要であったり不適切な要素があることには気づいておられないでしょう。そして習慣の中に組み入れられることで心身の不調を引き起こしたり、理想とする動きを阻害したりします。
よく「気づき」という言葉が使われますが、アレクサンダー・テクニークにおいて気づくべきは不適切な身体活動と精神活動であり、そこからの修正を試みることだと思います。正直なところ、従来のボディーワークのイメージでとらえてしまうと違和感を覚えてしまうでしょう。まずはアレクサンダー・テクニークの目的をきちんと理解することから始めるべきだと感じました。
(辻田 浩志)
カテゴリ:ボディーワーク
タグ:アレクサンダー・テクニーク ボディーワーク
出版元:医道の日本社
掲載日:2018-06-07