ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
我ら荒野の七重奏
加納 朋子
中学の吹奏楽部が物語の舞台。正直どんなところでも物語になるもんだなと感心しました。人がそこで生きている以上、それそのものが物語であるわけですが、母親が主人公というのは意表を突かれた感じがしました。慣れないシュチエーションに戸惑いつつ読んでみると、今どきの親子関係で話が展開。私が子供のころとは全く違うし、私の子供の世代とも様子が違いそうですし、何よりも父親と母親とでは子供に対するスタンスが違いますので、異次元の物語を読んでいるような違和感を覚えつつスタート。
ところがひとたびストーリーが転換すれば疾走感のある展開が次々に待っています。冷めた気持ちで読んでいたのですが、中盤から後半にかけて物語にのめり込んでいきます。中学生の母親たちの凄まじいパワーは、恐ろしくもあり痛快でもあります。作者のたたみかけるようなストーリーの進め方は主人公のパワーと相まって読者を引きずり込むように思えました。
こんな環境はあまり好きではありませんが、物語として読む分にはこんなに面白い話はありません。結果よければすべてよし。最初はもめていた母親たちも次第に分かり合え、子供たちも成長してハッピーエンド。予想を裏切らない結末ではありますが、軽快な小説はこうでないといけません。
頑張っているおかあさんの物語です
(辻田 浩志)
カテゴリ:フィクション
タグ:吹奏楽
出版元:集英社
掲載日:2018-07-10