ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
最強部活の作り方 名門26校探訪
日比野 恭三
指導する生徒たちを頂点に導くためにはどうすればいいのか。
私立高校17校、公立高校9校、全26校の部活動がオムニバス形式で紹介されている。メジャースポーツの野球・サッカー・バスケットなどはもちろん、マイナースポーツのフェンシングやカヌー、文化部の書道部・競技かるた部まである。
競技も地域もチームの雰囲気も全く異なる中で、その部を最強たらしめる共通項は何か? 身も蓋もない話であるが、どのチームにも共通していたのは優秀な選手、優秀な指導者、そして恵まれた環境である。大阪桐蔭高校硬式野球部が史上初の2度目の春夏甲子園連覇を成し遂げたことは記憶に新しい。府外出身の選手を多く擁し、寮が完備され、競技に集中できる環境の中で、質の高い練習が行われる。
しかし本書から読み取るべきは、最強に至る「過程」である。部の発足から部員集め、練習法の試行錯誤、チームづくり、周囲の協力・支援、全国の舞台を勝ち抜く勝負強さ・メンタル…。
どの部もはじめから頂点に君臨していたわけではない。日本一は文字通り1つだが、日本一のストーリーはまさに十人十色である。実際に起きたさまざまな困難も包み隠さず書いてある。
それだけではない。本書に登場する指導者たちは全て、最強の「その先」を見据えていた。近年は部活動の過熱化や勝利至上主義に対する批判が高まり、「ブラック部活動」という表現をよく目にするようになった。部活動の存在意義が改めて問われている。その中で指導者たちはスポーツの、部活動のあるべき姿を模索しながら指導にあたっていた。
勝利を目指す方法論を説きながら、部活動指導の哲学書でもある本書は、指導の現場に立つ先生方にぜひ読んでいただきたい一冊である。
(川浪 洋平)
カテゴリ:指導
タグ:部活動
出版元:文藝春秋
掲載日:2018-12-19