ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
日本最高峰のバスケ学 桜花流・上達論
井上 眞一 三上 太
ここ数年前まで日本男子バスケットボール界はBJリーグとナショナルリーグの2つのプロリーグが存在していました。そのため、国際オリンピック機構より2つのプロリーグが国内に存在するため、オリンピックへの出場は不可との判断を下されBリーグが発足したのは記憶に新しい出来事です。そんな男子バスケ代表は3大会ぶりにオリンピックへの出場を決めましたが、同じく女子バスケ代表も2大会連続5度目のオリンピックへ出場します。
この書籍は、その女子バスケットボール界日本代表クラスの選手を何人も輩出した指導者の経験や指導法が詰まっている一冊です。女子バスケファンならきっと知りたい逸話も多いはずです。
近年「学生アスリートへの指導の在り方」が世間から問われています。指導者が生徒へ対して振るう暴力や、行き過ぎた言葉のパワハラが問題視されています。それらは一人の指導者が生徒への接し方や、指導のスタンスを見直す必要がある問題だからです。この点、著者の述べている指導方法は、指導者として参考になります。
学生アスリートへの指導の根底には、まだまだ軍隊式の上下関係があります。この上下関係も一朝一短ですが、著者は現役時代に上下関係に嫌気が差したと述べており、3年生、2年生、1年生といった上下関係に縛られないチームを作っています。
よく聞く話ですが、昔会社勤めしていた経営者は自分が起業した際、従業員時代に自分がされて嫌だった組織のルールを反面教師にして新しいルールを作ろうとします。そんな考え方が、どことなく著者の述べるチーム作りに似ています。
そんな著者の指導方法の基準として「バスケが好き、教えるのが好き、子供が好き」です。好きこそ物の上手なれと諺で言いますが、まさにこの諺を率先する指導者です。バスケ好きならず、学生アスリート指導する指導者に読んで頂きたい一冊です。
(中地 圭太)
カテゴリ:指導
タグ:バスケットボール
出版元:東邦出版
掲載日:2019-05-10