ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした
小林 拓矢
「ブラック企業」。主に法の枠を超えた過酷なサービス残業を行わせたり、理不尽なパワハラや正当な理由のない解雇によって従業員を追い詰める企業のことを指す。こういった形態の企業は昔から存在していたと思うが、「ブラック企業」という言葉が盛んに用いられるようになったのはここ十年ほどのことです。
本書でははじめに「ブラック企業」とは何かを軽く述べたのち、著者が大学を卒業して現在のフリーライターとなるまでに勤務した3社の「ブラック企業」について、それらの企業で受けてきた扱いや勤務する中で感じていたこと、そして自身はどう反応し行動したのかが記されている。想像していたよりひどい扱いだなと感じる人もいそうな内容で、読んでいて暗く重い気分になる。しかし、これは実際に起こったことであり、特殊な出来事というわけでもない。世間には普通に存在していることである。もし自分の勤める会社がそうだったら、もしくは実際にそうならばどうすべきか、考えるきっかけになる本だろう。
ブラック企業とは世の中に一定数存在するもので、中には世に言うブラック企業にあたるとは微塵も思っていない企業や、認識していながらそのことを隠す企業もあることだろう。新しく社会に出る新卒者がそういったブラック企業を見破り避けることは難しいと思う。しかし、インターネットが普及した今なら、実際に起きてニュースにまでなった事件や就職関連サイトおよび匿名掲示板での評判からブラック企業を見破ることができるかもしれない。ただし、ニュースになっているほどならともかく、インターネットにある情報がすべて事実とも限らない。あくまでそれらの情報は参考程度にし、就職説明会等でその企業の空気をつかむことが必要になるだろう。
また、実際に社内で圧力に悩まされている人にとっても、この本の著者の経験と行動した結果から、今この状況ならばどうするのが最善なのかを考える助けになると思う。親・頼りになる先輩・弁護士・労基など相談できる先は多い。企業自体がブラックなのか、それとも特定の人物がブラックなのかによって、起こすべき行動も変わるだろう。
よほど好転しない限り最終的には退職へとつながると思うが、追い詰められて自ら命を絶つよりは遥かにマシである。同僚に迷惑をかけるからだとかそんなことを考えるより、まずは自分の身を第一に考えるほうがよっぽどいい。男女・世代関係なく、また社長や上司という立場の人たちにも、できれば読んでいただきたい一冊である。
(濱野 光太)
カテゴリ:人生
タグ:仕事 ブラック企業
出版元:講談社
掲載日:2019-08-20