ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
テーパリング&ピーキング 最適なパフォーマンスのために
Iñigo Mujika 水村(久埜) 真由美 彦井 浩孝 寺本 寧則
テーパリング(tapering)とは、「漸減させる」という意味である。
トレーニング指導においてチームから求められることは、試合でのパフォーマンスの最大化であることは言うまでもない。コーチやトレーニング指導者は試合直前まで選手のパフォーマンス向上を目指しながら、同時にケガの発生と疲労による影響に注意しなければならない。
本書は前半でテーパリングによる身体的・心理的変化に関する研究、パフォーマンス向上のためのテーパリングメソッドを解説し、後半ではオリンピックや世界選手権で結果を残した一流選手の試合直前のコンディショニング=テーパリング記録を紹介している。
非常に興味深かったのは、第7章のトレーニングの数理的モデル化である。選手に影響を与える要素はトレーニングはもちろん生活環境や人間関係も含めありとあらゆるものがあるが、それらとパフォーマンスとの関係を可能な限り簡略化するものである。これよってそれまでの章のテーパリングの研究結果やメソッドの理解が格段に深まり、指導者がこれから実施するテーパリングの効果を予測しやすく、コントロール可能なものにする。現場にいる人間が理解・実行できる内容であることは非常に重要なポイントであろう。
瞬発的競技、持久的競技、個人競技、チーム競技など、競技特性別にポイントを解説しているのも魅力的である。豊富な科学的知見とそれらが理解しやすい構成の本書は、指導の質の向上だけでなく、選手に対する説得力や他スタッフとの円滑な連携にも寄与するはずだ。
(川浪 洋平)
カテゴリ:スポーツ医科学
タグ:テーパリング ピーキング
出版元:ブックハウス・エイチディ
掲載日:2019-09-25