ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
自分で考えて決められる賢い子供 究極の育て方
サカイク
本書の著者「サカイク」は、「サッカーと教育」をテーマにしたジュニアサッカーの保護者向けメディアです。2010年12月に創刊され、「自分で考えるサッカーを子供たちに」をスローガンに、ウェブサイトやフリーマガジンでの情報発信のほか、子供たちやその親と直に触れ合う合宿形式のキャンプの開催といった活動を行なっています。
本書の中心になっているのが「ライフスキル」という能力で、WHO(世界保健機関)が各国の学校の教育過程への導入を提案している考え方です(本文より)。このライフスキルとして定義されている能力の中から、子供たちがこれからの「不確実な時代」を生き抜くことに寄与する5つの力を、サッカーを通じて身につけることが本書のテーマとなっています。その5つの力とは「考える力」「チャレンジする力」「コミュニケーション力」「リーダーシップ力」「感謝する力」です。
それぞれの力をサッカーの中や、あるいはフィールドを離れた場所での子供と親との関わりの中でどのように身につけていくのか、そのプロセスやプログラムは本書に詳しく書かれています。サッカーに限らず、スポーツをしている子供に対する向き合い方に悩む親にとって、きっと参考になることでしょう。
ラグビーワールドカップ、そして東京オリンピック、パラリンピックと続く今、スポーツの持つ力に対する注目はかつてないほど高まっています。しかし同時に、指導者のパワハラや体罰などの負の面がこれだけクローズアップされている時代もなかったのではないでしょうか。そんな時代に、子供がスポーツに取り組むことの意義を明快に述べた本書が発行されたことは、大きな意味があります。
しかし一つご注意を。「おわりに」の項にも書かれていますが、本書を読んで「サッカーは教育にいいらしいから習わせてみよう」と考えてしまうことも誤りだということです。サッカーはあくまでも子供たち自身が楽しんで取り組むものであり、そこにこそ自発的な学びが生まれること、それを忘れないようにしたいものです。
(橘 肇)
カテゴリ:指導
タグ:ライフスキル サッカー 子育て
出版元:KADOKAWA
掲載日:2019-11-12