ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
自分を守る患者学
渥美 和彦
副題は「なぜいま『統合医療』なのか」。著者はヤギを使った人工心臓の実験で世界記録を作ったことで広く知られている。東京大学医学部医用電子研究施設の教授、施設長を歴任、退官後の平成10年に「日本代替・相補・伝統医療連合会議」を設立。現在もその理事長で、平成13年には「日本統合医療学会」を設立し、代表を務めている。
この略歴で、本書のアウトラインが掴めた人もいることだろう。Complimentary and Altemative Medicine(相補・代替医療)という言葉をすでに見聞きした人は多いだろう。長いので通称CAMとも表記される。何に対して相補・代替なのかというと「西洋医学」である。いわば現代の西洋医学以外の医療がCAMになる。例を挙げると、中国・インドなどの伝統的東洋医学、ハーブ、鍼灸、瞑想、音楽、指圧、あるいは手かざしまでも含め、あらゆる医療行為がCAMに含まれる。
著者は、特に日本ではCAMについてあまりにも身近であることもあって、諸外国に比較し、国としての取り組みも国民の意識も遅れている点を指摘している。すでに欧米はCAM導入に積極的で、それが医療費抑制にもつながっている。また、曖昧なものも多いので、研究にも熱心で、効果があると判断されたものをリストし、それについては保険が適用される点も指摘している。
さらにこのCAMにとどまらず西洋医学と伝統医学との融合、「統合医療」を提唱し、「なによりも患者さん一人ひとりに最も適した医療とは何かを指向する道程」を急いでいると言う。医療をもう一度冷静にみる本。
新書判 192頁 2002年3月1日刊 660円+税
(月刊スポーツメディスン編集部)
カテゴリ:医学
タグ:代替医療
出版元:PHP研究所
掲載日:2002-04-15