ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
まんが医学の歴史
茨木 保
医師であり、漫画家でもある著者が、医学史的エポックメーキングな事件とともに、個性的な人物を取り上げる。
取り憑かれたような解剖学者ヴェサリウス。
患者を想う気持ちから、愛護的な治療法を確立したパレ。
好奇心の塊のような「実験医学の父」ジョン・ハンター。
産褥熱撲滅のため、手洗いを励行したゼンメルワイスの孤軍奮闘。
オランダ語辞典もない中、手探りで「ターヘル・アナトミア」を訳しきった杉田玄白と前野良沢。
麻酔薬「通仙散」開発にまつわる華岡青洲の母と妻の献身。
秀才ではあるものの、放蕩ぶりを存分に発揮していた野口英世などなど。
キーワードでしか知らない過去の偉人たちの、人間らしい部分がいきいきと活写されている。現代医学の恩恵に浴している身としては、ゾッとするエピソードも多いが、きっと何十、何百年後の人々には、現代の最新医学もそう思われるのだろう。
同著者の、疾病がイラストつきで解説されている『ビジュアルノート』、解剖生理学を楽しく学べる『まんが人体の不思議』も合わせておすすめしたい。
(塩﨑 由規)
カテゴリ:医学
タグ:医学史
出版元:医学書院
掲載日:2022-04-18