ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
イップス スポーツ選手を悩ます謎の症状に挑む
石原 心 内田 直
イップス、それは自動化された運動に起こる。器質的な問題はないが、機能に障害がある状態。ハードウェアではなく、ソフトウェアの不具合によって、今まで当たり前にできていた動きができなくなる。
運動の習得は、認知、習熟、自動化という段階をたどる。動作を自動化することで、状況判断にリソースを割くことができる。たとえば、一挙手一投足を考えながら行っていては、ほかに何も考えられない。スポーツ以前に、日常生活でも私たちは運動の自動化を行っている。スポーツにおいては、緊張・不安などの刺激により、自動化された運動に過剰な運動調節が介入することで、円滑な運動が阻害されるというのが、イップスの病態のよう。
ボディワークによっては、むしろ動きを分解し、噛みしめるように感覚を味わう、そんな向きのものが多いが、イップスには有効なんじゃないだろうか。
ともあれ、イップスという事象が広く知られ、対策が講じられて、スポーツを嫌いになったり、辞めてしまったりするひとが減ればいいな、と思った。
(塩﨑 由規)
カテゴリ:スポーツ医科学
タグ:イップス 投球
出版元:大修館書店
掲載日:2022-06-25