ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
痛み探偵の事件簿 炎症? 非炎症? 古今東西の医学を駆使して筋骨格痛の真犯人を暴け!
須田 万勢 小林 只
西洋医学と東洋医学に通じた写六先生が指導役となって、数々の難事件(症例)を解決していく。メインで治療にあたるのはワトソン役の先生で、最後には患者に薬を出しまくるモリアーティ役の先生が登場するという珍設定。
だが当然ながら、内容はまじめ。主にエコー下でのファシアハイドロリリース(FHR)を用いて、治療にあたる。超音波診断装置で癒着部位を確認しながら、生理食塩水を注射していくと、組織がミルフィーユ状にほどけていき、疼痛が消え、可動域が改善する、という。エコーの動画をQRコードで読み取って見ることができる。
ときおり、『fasciaリリースの基本と臨床』を引用しながら、最新の解剖学的知識、東洋医学的視点からの仮説を、写六先生が教えてくれる。
著者はダニエル・キーオンの『閃く経絡』の翻訳にも関わった医師で、現在はリハビリスタッフや鍼灸師など、コメディカルスタッフと協調しながら、患者の治療にあたっているという。
前回に引き続き、対話形式の本で、改めて気づいたのは、診断プロセスでよくある見落としについて、理解あるいはイメージしやすい、ということだろうか。今回はワトソン役の先生がいろいろ間違ってくれるのがありがたい。治療が難航しているとき、写六先生が現れ、的確なアドバイスをくれる。ホームズの名言の引用も忘れない。
FHRじゃなきゃだめなのかどうか、は自分には判断がつかないが、ファシア、エコー、鍼灸など、トレンドを押さえつつ、東洋医学と西洋医学の視点が入っている本というのはあまりないので、その点貴重だと思う。
共通言語としての解剖学は東西問わず必須だ、という意を強くした。
(塩﨑 由規)
カテゴリ:医学
タグ:fascia ハイドロリリース
出版元:日本医事新報社
掲載日:2022-06-27