ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
スポーツをしない子どもたち
田中 充 森田 景史
本書を執筆したきっかけ、それはスポーツ庁が小学5年生と中学2年生を対象に、年一回実施している体力テストだったという。令和元(2019)年度全国体力テストでは、握力や反復横とびなど、実技8種目を点数化した体力合計点の平均で、小5男子は2008年度の調査開始以降で最低の数値、中2男女いずれも前年度よりも数値が下がっていた(ちなみに、令和2年度は調査を中止、令和3年度の調査では小5、中2の男女ともに令和元年度の調査より体力合計点が低下していた)。
都市部ではとくに、公園でのボール遊びを禁止したり、子どもの遊ぶ声を騒音だ、などとして、子どもが思いっきり遊べる場所が少なくなっている。ほかにもスマホやゲームの影響、スクリーンタイムの増加は、スポーツ庁も指摘している。それに輪をかけて、令和3年度の調査ではコロナ禍の影響がもろに出ていると思われる。東日本の震災後、福島の子どもたちの体力テストの結果も低下した。その後、さまざまな取り組みのなかで調査の結果は改善しつつあるという。しかし、運動発達には適齢期がある。スキャモンの発育曲線などは有名だが、運動神経の応用力がもっとも発達するのは、9〜12歳までの、ゴールデンエイジと呼ばれる時期だ(3〜8歳までのプレゴールデンエイジも大事だとされている)。その時期に、外遊びの機会を奪われた子どもたちのからだへの影響は、中長期的に出てくるのかもしれない。
ちなみに、今の小学生は「公園派」と「ゲーム派」に、はっきり分かれるらしい。公園に集まってゲームをしている子たちは、どっち派なんだろう。
(塩﨑 由規)
カテゴリ:身体
タグ:子ども 発育発達
出版元:扶桑社
掲載日:2022-08-24