ATACK NET ブックレビュー
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世界は四大文明でできている
橋爪 大三郎
本書でいう世界の四大文明、それは、ヨーロッパ・キリスト教文明、イスラム文明、ヒンドゥー文明、儒教文明のこと。この本のもととなる講義をした時点では、それぞれ25億人、15億人、10億人、13億人を擁し、もろもろ足して世界人口73億人が現在地球で生きているらしい。
まず、自分が小学生のときは世界の人口およそ60億人と習っていたのに……と、少し気になったのでググってみると、なんと今年(2022年)11月15日で世界人口は80億人に達する見込みだという! 恐ろしい。
閑話休題。まず文明とは、というところで、筆者は文化との対比から説明する。文化と文明の違いはなにか。文化は、民族や言語など、自然にできた人びとの共通性にもとづく。対して文明とは、多くの文化をまとめる共通項を、人為的に設定することだという。
人びとが同じように考え、同じように行動するための装置が宗教だ、という作業仮説にもとづき、それぞれの文明を、宗教を補助線にして腑分けしていく。そうすると、現在の世界、ありとあらゆる分野でみられる特徴や傾向に、宗教的といえる思考の鋳型が、見え隠れする。なんとなく当たり前だと思っていることが、どれだけ多いか、そして、自分とは違うバックボーンをもつ他者の目にはどれだけ奇異に映るか。一般的に、ひとの悩みやストレスの原因は、人間関係がほとんどだといわれる。たとえ同じ文化圏であっても、ひととひとがすれ違うのは日常茶飯事だ。他の文化圏同士であれば推して知るべし、といったところだろうか。しかし、もしお互いに納得しあえないことであっても、相手の視座に立つよう想像力を働かせて、対話をやめなければ、今まで見えなかった共通点が浮かびあがってきたり、落としどころが見えてくるのかもしれない。本書のようなものを読み、他者の視点を追体験することも、その一助になると思う。
(塩﨑 由規)
カテゴリ:その他
タグ:文明
出版元:NHK出版
掲載日:2022-09-02