ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
東大教授が教える独学勉強法
柳川 範之
家族の仕事の関係で、子ども時代は海外で過ごすことが多かったという著者。基本的にひとりで、しかも非日本語圏で、さらに、今と違って自由に書籍も手に入らない環境下で、学習してきた著者の視点から眺める勉強法は、一般のそれとは一味違う。
まず、どれだけ有名な本でも、自分には合わないものがある、という。
さらに、理解するのに時間がかかっても、とても深く理解するひともいれば、そうでない、ありとあらゆる理解の仕方が、ひとにはある。
いわゆる勉強ができるひとというのは、自分に合った勉強法を身につけているひとなのだという。なので著者はまず、自分が理解しやすい本を探すところから始める。
基礎がない場合、書いてある内容を素直に受け入れることは必要。しかし、と著者。ある程度知識がある場合は、むしろ本に書かれていることに、ケンカを売りながら読むのが好ましい、という。というのも、著者にとって学びのプロセスとは、一旦押し返してみること、だからだ。それを「加工業」ともたとえる。一旦仕入れたものを熟成させたり、手を加えたりしてアレンジする。あるいは、他の分野の知識と、比べたり合わせたりして、いろんなものに応用可能なセオリーを抽出してみる。その作業こそが、勉強ではないかという。
また、ノートやメモに関しても、著者のいうことはユニークだ。「書かないと大事なポイントが頭に入らないのなら、そもそもそれは自分にとって必要ではないと思う」という。
とはいっても、日常的に重要事項をメモすることは著者も行う。つまり、なんでもかんでも頭に入ってしまう超人的な記憶力を持っているというわけではないのだ。
勉強で大切なのは、読んだ内容を一字一句再生できることではなく、よく考えて理解をすることだ、というのが、ざっくりしたまとめになるかと思う。
(塩﨑 由規)
カテゴリ:その他
タグ:勉強法
出版元:草思社
掲載日:2023-01-30