ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
日常生活に活かす『スポーツ科学リテラシー』
杉浦 雄策
「スタミナとは、肺、心臓、筋肉などすべての機能統合した指標(持久力)のことである」という一文を見て気づかされたのは、誰もが日常的に使っている「スタミナ」という言葉の定義。あまりにも一般的過ぎて考えたこともなかったのですがスタミナってそんな意味だったんですね。さらにスタミナの解説にとどまらずスタミナの効果と続き、話は生活習慣病へと展開していきました。ここまで広がるスタミナの話題に触れて初めてスタミナを知ったような気がしました。同様に誰もが当たり前に使っている「体力」という言葉も、スタミナに関連してスポーツから日常生活まで具体的な解説が示されています。
自分自身の知識が「ブツ切れ」のものであることに気づくことこそがリテラシーを得ることの第一段階なのかもしれません。そこから応用できる知識が生まれてくるものだと感じました。点が線になり、線が面になり、面が立体になることこそが「日常生活に活かす」というタイトルの意味なのでしょう。
スポーツ科学には機械的なものという印象を持っていたのですが、むしろ有機的な生物としての研究こそがスポーツ科学であると再認識しました。機械的どころか「心」とスポーツのとらえ方も精神論という一面的なものではなく、生理学や心理学という視点から身体とのつながりを探ろうとする試みから、「人として生きる」喜びや楽しみに至ることを知り、印象が180度変わりました。
あえて言うのであれば、本書の項目はどこかで聞いて知っているものが多いかもしれません。しかし一つ一つの知識がつながりを持つことによって構築されることが「使える」知識であることを教わりました。
(辻田 浩志)
カテゴリ:スポーツ科学
タグ:スポーツ科学
出版元:ライフ出版社
掲載日:2023-03-22