ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
美しい日本の身体
矢田部 英正
本誌(月刊スポーツメディスン)でも何度か登場していただいた矢田部さんの新著。矢田部さんの著書には『椅子と日本人のからだ』(晶文社)と『たたずまいの美学』(中央公論新社)があるが、この新書は、これまでの成果をまとめ、さらに深い考察を加えた感じがする。
1章「和服のたたずまい」以下、「『しぐさ』の様式」「身に宿る『花』の思想」「日本美の源流を彫刻にたずねる」「日本人の坐り方」「日本の履物と歩き方」「基本について」と計7章からなる。つまり、和服、動作、能の「花」、仏像の美、坐位を中心とする姿勢、ぞうりやワラジ、ゲタと靴、それによる歩行など、矢田部さんが研究し、また日々接しておられるテーマが並んでいる。面白いから読んでくださいと言うしかないが、一部だけ引用しておこう。
「一見、何の役にも立っていないようで、あらゆる物事の認識の基盤になっているのが実は人間の身体で、それは自分を取り巻く風や光や光に照らされた世界を感じ取るセンサーの役割を果たしてもいる。その感覚能力に磨きをかける一つの方法として、坐って姿勢を整えることを好んで選択してきた歴史が日本にはあり、その澄んだ感覚で世界を見つめる感受性こそが、実は日本文化を美しく秩序立ててきた基盤にあるものだと私は考えている」(P.148より)
2007年1月10日刊
(清家 輝文)
カテゴリ:身体
タグ:歩行 履物
出版元:筑摩書房
掲載日:2012-10-11