ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
「退化」の進化学
犬塚 則久
副題は「ヒトに残る進化の足跡」。ヒトは進化しているのか、それとも退化しているのか。この問題を本書ではヒトと動物の各器官で比較しその変遷にもふれていく。人類の起源は霊長類、哺乳類、脊椎動物の共通先祖、そして無脊椎動物から単細胞生物、ついには原核生物にまでさかのぼることができる。終章ではヒトのからだに見られる退化器官や痕跡器官を、4億年前から現代に至るまで順に並べているが、いろんな機能がこれまで消えて、生まれていることがわかる。ヒトのからだは生きるために進化していると言ってもよい。捉え方によってはそれを退化と呼ぶこともあるかもしれない。だが本書は哲学本ではなく、何が進化で退化なのかを比較解剖学や形質人類学、人間生物学など多くの資料に基づいており、まさにからだは生命の産物なのだと実感を持たせてくれる一冊になっている。
2006年12月20日刊
(三橋 智広)
カテゴリ:身体
タグ:進化 身体
出版元:講談社
掲載日:2012-10-11