ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
すべては音楽から生まれる
茂木 健一郎
著者は近年、脳科学者としての活動の場を広げている茂木氏。同氏は音楽愛好家としても知られるが、本書ではシューベルトをはじめとする音楽家たちの作品と向き合うことを通して、音楽について書いている。
本書の中で「耳をすます」ことと、新しいことを「発想する」ことは同義とある。それは下界からの音を聴きながら、自分の内面に耳をすませ、何がしかの意見や考えを発しているという。換言すれば、「聴くこと」とは、自分の内面にある、いまだ形になっていないものを表現しようとする行為に等しいということ。またそこから生まれてくる解放感こそ、心が脳という空間的限定から解放される過程であり、(私)という個が「今、ここ」という限定を超え、普遍への道に舞い降りた瞬間だと言えると、独特の言いまわしで語っている。
音楽と脳を繋げて語る視点は、音楽を愛する脳科学者、茂木氏だからこそかもしれない。読み進めていくと、改めて「耳をすます」ことの大切さに気がつく。是非一読願いたい。
2008年1月7日刊
(三橋 智広)
カテゴリ:エッセイ
タグ:脳 音楽
出版元:PHP研究所
掲載日:2012-10-12