ATACK NET ブックレビュー
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医療の限界
小松 秀樹
まず本書を手にとる前に知ってもらいたいことは、この本は医療事故そのものについて語られるものではなく、事故の報道に関する論理について語るものである。
昨今、医療をめぐる事故がメディアで大々的に取り扱われるようになった。それを機に社会の医療に対する態度が大きく変化してきたと小松氏は語るが、それら医療を一方的に非難する社会のあり方についても「人間の死生観が失われた」と危惧する。つまり現代は不安が心を支配し、不確実なことをそのまま受け入れる大人の余裕と諦観が失われたと、この本では書かれている。実際に医療の現場では、こうした社会背景を受けて勤務医や看護師が現場を離れつつあり、現場と患者との軋轢は医療崩壊を招いている。
また現代社会は医療崩壊だけでなく学校崩壊まで叫ばれ、それは根本に、現場だけに原因があるのではないと改めさせられるだろう。今1つの問題に対して、社会はどのような姿勢でいればよいか。
2007年6月20日刊
(三橋 智広)
カテゴリ:医学
タグ:医療
出版元:新潮社
掲載日:2012-10-12