ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
乳酸と運動生理・生化学 エネルギー代謝の仕組み
八田 秀雄
医科学の研究は実に日進月歩である。これまで定説として言われてきたこと、実践されてきたことが、数年の間にその考え方も実践も変わってしまうことは少なくない。そうした研究によって考え方や捉え方が変わってきた1つに「乳酸」がある。「乳酸は疲労の原因と関係し、スポーツ選手にとって悪いもの」といった考えが主流であった。しかし、長年乳酸の研究に携わってきた八田氏は「乳酸は老廃物ではなくエネルギー基質であり、乳酸ができるのは糖を多く利用するからで、酸素がないからではなく、乳酸ができる運動が無酸素運動でもありません。運動の疲労は多くの場合乳酸が主たる原因ではありません」と本誌(月刊スポーツメディスン)で述べているように、最近では乳酸の考え方は変わってきた。
とはいえ、多くの運動生理学のテキストにはいまだに「強度の高い運動は無酸素運動」と書かれているものもあり、「それならば自分で教科書を作るしかない」と書かれたのが本書である。したがって、最初の4章を運動生理の基礎、次の5~9章を糖と脂肪を中心とするエネルギー代謝の基本、後半の10~16章がエネルギー代謝の応用で構成されている。これから運動生理学を学ぶ人に最適な1冊である。
2009年2月17日刊
(田口 久美子)
カテゴリ:スポーツ医科学
タグ:乳酸 生理学
出版元:市村出版
掲載日:2012-10-13