ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
先を読む頭脳
羽生 善治 伊藤 毅志 松原 仁
羽生名人と2人の科学者による「先を読む」ことを解明しようという本。羽生氏に行ったインタビューを文章にし、それに対して人工知能的立場の松原氏と認知科学的立場の伊藤氏が解説していくという構成である。
「人間のような知的な振る舞いを機械に代行させたい」というのが人工知能に対する人類の夢で、認知科学は「人間の様々な知的活動のメカニズムを解明しようとする分野」とのこと。この両者の専門家が「先を読む」という視点で、「ハブにらみ」の棋士の協力を得て、本書が成立した。
さて、将棋を科学的にみるとどうなるか。「二人完全情報確定ゼロ和ゲーム」である。詳しくは本書のP.9を参照していただきたいが、お互いに相手の手が明かされているし、サイコロを振るといった不確定な要素がなく、勝敗が明確という意味になる。
それにしても、羽生さんのすごさ、そして将棋の特殊性。それは取った相手の駒を使えるということで、チェスが収束していくのに対し、「将棋は終盤に向かって発散する」。
スポーツにも科学にも関係する本なのである。
2009年4月1日刊
(清家 輝文)
カテゴリ:身体
タグ:脳科学
出版元:新潮社
掲載日:2012-10-13