ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
跳び箱ができる!自転車に乗れる!
下山 真二
この本は、前作「かけっこが速くなる!逆上がりができる!」に続く第2作目と して出版されている。
今回のテーマは「あそび運動」をテーマとしており、私たち大人も身に覚えのある、“昔遊び”がいくつも紹介されている。しかし、昔懐かしい遊びが単純に紹介されている本ではなく、「あそび」を手法として子どもたちの発育発達に役立つ運動プログラムを分かりやすく説明してくれている。
とくに興味深いのは、子どもたちに気づきを与えるための「コツ」が整理されていること。私たちが子どものころにつかんだ「動きの感覚」を「理解しやすいフレーズ」で言い直し、さらに段階的に学習できるよう組み立てて紹介されている点はとても興味深い。
スポーツや人体の仕組みについて知識の少ない、お父さん、お母さんたちが子どもと一緒になって読むことのできる「体育の自習本」として十分活用できる内容である。
その一方で、スポーツに携わる専門家にとっても参考になる部分が多い。それは、指導をする側のわれわれが「ついついやってしまう失敗」を紹介していることである。子どもの「気づきを待てるかどうか?」は、専門家だからこそ振り返っておきたい点だと感じている。
「一つの動きを5個の言い方で説明する(できる)」というフレーズも紹介されている。日頃から、伝えるための工夫について試行錯誤をするのだが、単純な表現ながら子どもの心に届く核心をついている。子どもに興味を持たせ続けることは実に難しい。 子どもたちが自分から望んで身体を動かそうとする場面をつくり、タイミングよくアイコンタクトを行うことが(文中では、「指摘せずに、ほほ笑む」と表現されている)、われわれの指導場面にも重要な要素として再認識させられた。
本書は、子どもの身の丈、子どもの目になって関わりたい、と心から感じさせてくれる一冊として、ぜひ広くお勧めしたい。
(青島 大輔)
カテゴリ:運動実践
タグ:遊び 発育発達
出版元:池田書店
掲載日:2012-10-13