ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
What is Coaching? 今、コーチに求められるもの
立花 龍司
初版は平成10年。10年以上前の書籍である。しかしこの本の内容は決して色あせることなく、今も貴重な現場の声として価値があるものである。数ある著書の中で、おそらく唯一の具体的なトレーニングを中心としていない本であるが、最も内容の濃い作品ではないかと思っている。
評者もまだ学生だった頃、この本に大いに勇気づけられた。そして渡米を決意し、憧れであったプロスポーツの世界へ足を踏み入れることができた。尊敬する立花氏ご本人と一緒に仕事に就けたことは私にとって一生の財産となるだろう。
今、改めてこの本に目を通すと、当時の立花氏の視点が非常に的を射ているのを痛切に感じる。悲しいかな、プロ野球のコーチに関する問題点はこの十年でさほど改善されていないのではないか。愛する野球がこれからも日本を代表する球技であり続けるためにも、次の十年を迎えたときには、この状況が改善されている事を強く願う。決して過保護にすることではなく、一人一人の人格を尊重した、選手主体の成熟した現場が構築されていってほしいものである。
スポーツ界の未来を今後担っていく、次世代のコーチや指導者に、今もなお自信を持って薦められるのが、この本である。野球界の未来へのポジティブな情熱――そんな思いを喚起してくれる。
(弘田 雄士)
カテゴリ:指導
タグ:コーチング
出版元:日刊スポーツ出版社
掲載日:2012-10-13