ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
パワー獲得トレーニング よくわかるプライオメトリクス
有賀 誠司
「ストレッチ=ショートニングサイクル(SSC)を含む予備伸張または反動動作を用いて行われる、素早くかつパワフルな動作」(NSCA 決定版ストレングストレーニング&コンディショニング)と定義され、とくに競技力向上を求めるアスリートの間などではポピュラーに行われているプライオメトリクストレーニング。が、当然のことながら一般の人々はこうした説明をされてもピンとこないはずである。
一方で、「短時間内に最大の力を発揮する能力(爆発的パワー)を高めるための効果的なトレーニング法」(本書)という一説とともにサッカーやバスケットの競技動作のイラストや写真、さらには「爆発的パワー≒一般に言われるところの瞬発力」、といった説明まで添えられていたらどうだろう。少なくとも中高生の部活指導を担当する人や駆け出しのフィットネス指導者などは遥かにそれをイメージしやすいのではないだろうか。
本書は、そうしたわかりやすくかつ詳細な、おそらく我が国で初といってもいいであろう、一般の人も手に取れるプライオメトリクストレーニングの専門解説書である。著者は日本トレーニング界の第一人者、東海大学の有賀誠司助教授(当時、現在は教授)。冒頭で著者自身も述べているように、「専門用語が多く、非常に難解であった」プライオメトリクストレーニングを、豊富な写真とともに精選されたエクササイズ、付属のDVD、そして氏ならではの平易な言葉による解説で文字通り「分かりやすい」ものにしてくれている。
さまざまな科学的背景やエビデンスと切っても切れない関係にあるトレーニング業界だが、ともすればそれに固執するあまり「象牙の塔」から見下ろしているかのようなスノッブな解説に陥ってしまう危険性とは常に隣り合わせである。商品価値を持たされ、流行になってしまうトレーニングメソッドなどはとくにその傾向があるとも言える。
第一人者自らが「らしい」スタイルでそうしたリスクに対しても揺るがぬ姿勢を示してくれているようにも感じられる、嬉しい一冊である。
(伊藤 謙治)
カテゴリ:トレーニング
タグ:プライオメトリクス
出版元:新星出版社
掲載日:2012-10-13