ATACK NET ブックレビュー
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失敗学事件簿 あの失敗から何を学ぶか
畑村 洋太郎
「失敗学」という少し聞きなれない言葉がある。
人は失敗に対しネガティブなイメージを持ち、そしてできる限り失敗を回避しようとする。それがゆえに失敗を「悪」とし、目を背け、時間と共にその失敗を忘れる。そしてまた失敗を繰り返すという悪循環に陥る。
それに対し、失敗を直視し、積極的に学ぶことで新たな知識が得られ、不必要な失敗を減らし、創造につなげられるというものが「失敗学」である。要は「失敗は成功のもと」を証明する分野である。
本書では実際に起こった事故や事件の失敗例をまとめ、その原因を検証している。事故や事件を「負の遺産」として風化させるのではなく、未来に向けて活かしていかなくてはならないと筆者は述べている。
・許される失敗と許されない失敗
・失敗は誰にでも起こる、失敗しない人間はいない
・失敗に対し「責任追及」する組織と「原因究明」する組織の明暗
・大きな失敗の裏には必ず小さな失敗が30近くはあり、さらにその裏にはより小さな失敗が300はある。(ハインリッヒの法則 1:29:300)
・20~30年周期に大きな失敗が起こる
・優れたリーダーは失敗の元となる脈路を探り(=逆演算)、これから起こりうるリスクをイメージできる(=仮想演習)人物である。
・慣れが失敗を招く
・マニュアル通りのことだけ、自分のことだけ、目の前のことだけしか見えてない人間が大きな失敗を招く
など、本書では失敗という事実からさまざまな教訓を提示してくれている。また、筆者自身が現場に出向き、現物をその目で確認し、対象となる人(=現人)に直接話を聞くという「三現主義」をモットーとしているため、非常にリアルな内容を感じることができる。
「失敗しないように行動することが一番の失敗だ」「失敗なんてない。この方法ではうまくいかないという発見だ」失敗に対しての捉え方が変わるだけでなく、人生の考え方も変えてくれる、元気を与えてくれる作品である。
(磯谷 貴之)
カテゴリ:人生
タグ:失敗
出版元:小学館
掲載日:2012-10-14