ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
キッズテニス 「好き」を見つける 「楽しい」を育む
伊達 公子
キッズテニスのメニュー例が示されているが、ハウツー本ではない。本書は、なぜキッズテニスなのか、キッズテニスを通じて何をどうしたいのか、という著者の考えが詰まっている。その答えの1つとして「総合型地域スポーツクラブ」が挙げられており、著者はそれを理想としている。
しかし、本書の発行は2004年。末端のスポーツ現場にいる私は、現在、総合スポーツクラブは早くも転換期にきていると感じている。地域に根づいた多種目多世代コミュニティーとしての「総合型地域スポーツクラブ」が提唱され、行政の後押しもあって各地で競うように設立されたが、理念のみが先行し、運営が立ち行かなくなるクラブや矛盾を抱えて立ち往生しているクラブが増えてきている。そして、これからはクラブの淘汰・再編・統合が進むだろうと感じている。
なぜ、そうなってしまったのか? 多くの総合型スポーツクラブはその目的が「総合型スポーツクラブの設立」だったからだと思う。総合型スポーツクラブを通して何をしたいのか、という目的も無くただヨーロッパのシステムを模倣した結果なのだろう。
また、「子どもの頃はいろんなスポーツをやるとよい」と言われ、スポーツクラブを掛け持ちする親子も多い。親も子もヘトヘトだ。さらに指導者も困る。うまいけど他のクラブとの掛け持ちで練習を休みがちな子と、下手だけど毎日真面目に練習にくる子と、さあ、先発メンバーに選ぶとしたらどっち? 確かに「総合型スポーツクラブ」なるものが各地に存在するようにはなった。しかし、どこかで何かを履き違えてしまったような気がする。果たして、著者が見た夢は実現したのだろうか。そんなことを考えながらこの本を読んでみるのもよいと思う。
(尾原 陽介)
カテゴリ:指導
タグ:総合型スポーツクラブ ジュニア指導
出版元:岩波書店
掲載日:2012-10-15