ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
一歩60cmで地球を廻れ 間寛平だけが無謀な夢を実現できる理由
比企 啓之 土屋 敏男
「私が未来について語ったらおかしいかしら?」というような内容を老婦人が語るテレビCMがあった。「否」見た者にそう思わせる独特の説得力があった。
だが還暦を迎えようとする男性が自分の足とヨットだけで世界一周しようとしたら、それは明らかにおかしい。
本書はタイトル通り、芸人・間寛平氏のワールドマラソン挑戦を描いたドキュメントとなっている。氏は現在まだ挑戦を続行中であり、本書ではこのおかしい挑戦スタートに至るまでのプロセスが主に描かれている。
地球一周というのは、たんに約4万kmの距離や途中のケガや病気の危険だけが問題になるのではない。地平線しか見えない場所、剥き出しの岩肌が見える場所、さらには政治的に不安定な紛争地域もある。そのような場所を車や飛行機で迂回することはせずに、自分の体だけで走ってみたい。テレビ局の企画としてはリスクが大きすぎて誰も思いつかなかっただろう。
ただ、間氏はふと「やってみたい」と思いついてしまった。意外にも本気だったので、だんだん周囲が実現に向けて動き、後づけで企画となった。
誰から見ても無謀だと思うことを実現するために1つ1つのハードルを越えていき、各方面多くの人にさまざまな形での応援を受けてスタートにまで漕ぎつけた。無理だと思われるモノへの挑戦はスポーツの真髄であり、実現化へのプロセスは各方面への手本となりうる。とくに“文化”という言葉に頼る一方で、メジャー化できていない競技の関係者にとっては一読の価値があろう。
(渡邉 秀幹)
カテゴリ:エッセイ
タグ:テレビ 企画 マラソン
出版元:ワニブックス
掲載日:2012-10-16