ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
わが愛しきパ・リーグ
大倉 徹也
パシフィックリーグをこよなく愛する著者の文章からは、野球をエンターテイメントとして捉え、1つのスポーツショーとして見ようという思いが伝わってくる。かつて新庄剛志選手が日本ハムファイターズにいた頃、ファンサービスで札幌ドームにフェラーリであらわれたことがあった。神聖なグラウンドに車であらわれるとは何事だと訝しむ関係者がいたと聞くが、そのエンターテイメント性の高さで、プロ野球を好きになった札幌のファンは決して少なくないと思う。現在各球団がそれぞれ地域密着を掲げ、さまざまな経営努力をしているが、ファンの気持ちを一番に考えながら、既成の概念を打ち破っていく力強さは、パ・リーグの球団のほうに一日の長があるのではないだろうか。
また、本作に出てくる「純パの会」の会員の方の声を聞くと、こうやって野球を楽しんでいる方もいるんだなと新鮮な気持ちになった。それは、審判のパフォーマンスに焦点を当てたり、個性的な存在感を出す選手を探すことであったり、応援団の応援ぶりを楽しむことであったりする。その魅力の多様性を鑑みると、プロ野球界の歴史の重さを感じるとともに、これからの可能性をも強く期待させるものであった。
(水田 陽)
カテゴリ:人生
タグ:野球 ノンフィクション
出版元:講談社
掲載日:2012-02-07