ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
アスリートのための食トレ 栄養の基本と食事計画
海老 久美子
スポーツを行うアスリートにとって練習、補給、休養の3つはどれが欠けてもいけないものである。本書は「食べ物の力で強くなる!」をテーマに、食べることと食べ物に含まれている栄養素だけではなく、食べものの姿や色を見たときの楽しさや調理しているときの音やにおいなど、それらをすべて含み、食べ物の力として紹介している。
本書はスポーツの年間計画に合わせたピリオダイゼーションで食事トレーニングを「座学期」「準備期」「試合期」「オフ期」の4つにわけている。そして、その食トレで使用する代表的な100種の食べ物のプロフィールとそれらを使用した家庭料理のレシピが載っている。
「座学期」では基礎的な栄養学から給食と家庭食のよい関係の築き方、コンビニやファーストフードの上手な利用法が書いてあり実践的で勉強になる。冒頭にある食生活チェックリストはアスリート用だけでなく、保護者・指導者用のチェックリストと両方の視点からチェックできるので実用性がある。
「準備期」では大会に向けて食トレを通して心の準備や体調管理、食からのケガへのアプローチ、上手な減量、増量のコツから海外遠征まであらゆる状況に対応した内容にまとまっており勉強になる。
「試合期」では試合前、当日の朝、試合後の食トレが書かれている。1点気になったのは持久系の内容は載っていたがそれ以外が載っていなかったのが残念と感じた。
「オフ期」ではオフ期の体重増加の注意事項だけではなく、お菓子やジュースとの上手な付き合い方や引退から進学までの引退後の食トレが載っており、とくに保護者にとっては勉強になる内容にまとまっている。
全体的に幅広い年齢のアスリートや指導者、保護者に向けられて作られたと書籍だと感じ、多くの人に読んで実行してほしい。しかし、幅広い読者層を狙ってしまったことですべての読者がこの一冊で食トレを理解し実行できるかは疑問が残る。ジュニアに向けた内容が多く載っていたが、そのジュニアの食事をつくるのは保護者であり、必ずしも保護者がスポーツに関わっていたとは限らないので、ピリオダイゼーションの一言では難しいのではないかと感じる。簡単にでも何かしらの競技の年間スケジュール例を挙げて記載してほしかった。
レシピでは逆に一人暮らしのアスリートや指導者には難しかったのではないかと思う。単品の料理が多く載っているのはありがたいが、実際にどのようにその単品料理を組み合わせるのがよいのかがわからない。文字では説明されていたが、写真でも1食での組み合わせはもちろんだが、3食での組み合わせ、希望を言わせていただくならピリオダイゼーションに分けた組み合わせが載っているとよりわかりやすかったのではないかと感じた。
(長谷川 大輔)
カテゴリ:食
タグ:食事 レシピ
出版元:池田書店
掲載日:2012-10-16