ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
すぐに役立つサプリメント活用事典
古田 裕子 山田 昌彦
健康的な生活を維持するためには、「運動‐休息‐栄養」のライフバランスが大切であり、本書では、その中の1つである「栄養」に焦点を当てている。必要な栄養素量を継続的に摂取することは難しいのが現実であることから、日々の食生活に存在する不適切な部分を補正する目的で開発された「サプリメント」に注目し、その理解を深めることで、健康的な体調の構築に貢献しようとするのが本書の目的である。
本書の最大の特徴は、子どもから大人まで幅広い対象の抱える問題を意識した、「目的別サプリメントの選び方」の構成と豊富さにあるだろう。まず、1つの課題について、見開きで完結している点である。決して長すぎることなく、問題の原因と解決策を平易な言葉で簡潔に記述し、キーワード化がされているのでポイントを理解しやすい。次に、日常生活を通じた注意点と、推奨サプリメントの内容について、イラストで表現している点である。これによって、視覚的側面からも読者の理解促進に働きかけているように感じる。要は、「一般読者」の視点に立って、繊細な配慮がなされていることで、知識の理解向上が進みやすいように構成されているということである。単なる知識の獲得だけでなく、指導者として、選手への配布資料の作成にも大変参考になる。
また、具体的な方法に加え、「栄養素を体内に取り入れる」という行為についての本質的部分に対しても、一般読者に簡潔かつ適切に伝達することを試みている。具体例として、「サプリメントに期待される役割」についての記述を以下に引用して紹介したい。
食事には栄養の補給(1次機能)、味覚を楽しむ、満足感を得る(2次機能)、病気予防や症状の改善(3次機能)という3つの機能があり、サプリメントはこのうち1次機能と3次機能を補うものです。
毎日の食事では不足しがちな栄養素を補うことに加え、カルシウムとマグネシウム、ナトリウムとカリウムなど体内での栄養のバランスを整える、体質や環境に合わせた機能性成分を補給する?などがサプリメントを摂取する目的である。
この部分について、前半部では「食事とサプリメントの関係」、後半部では「サプリメント摂取の目的」を理解することができるのではないだろうか。
本書は、一般的なニーズに対応することを目的としていることから、内容について大変理解しやすいだけでなく、「指導者の選手に向けた配布資料作成時の参考文献」としても参考になる一冊になるのではないかと考えている。「指導対象への伝達方法」という側面からも学びを得ることができる。
(南川 哲人)
カテゴリ:食
タグ:サプリメント
出版元:法研
掲載日:2012-10-16