ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
テクニックはあるが、「サッカー」が下手な日本人
村松 尚登
本書のタイトルは多くの理論に縛られがちな日本スポーツ界の急所を的確に抉っている。スポーツに限らず技術や理論の追求は日本のお家芸とも言える。そして革新的なモノを生み出しているにもかかわらず、それを使いこなせずに、逆に使われてしまうことも。
著者の松村は日本の大学卒業後、プロを経ずに単身スペインに渡って経験を積んで現在は名門FCバルセロナでスクールコーチとして未来のスターを育てている。いや、本書の表現を借りるなら「選手が自ら育つ環境を整える」作業をしている。“カンテラ”と呼ばれる育成下部組織の充実があればこそ、バルサのトップチームはカンテラあがりの選手が軸にいることで、国外のスター選手を集めても(時に失敗はあるものの)バルサらしさは受け継がれている。
その方法は緻密な計算による計画(ピリオダイゼーション)によるものであるが、その中心にあるのは計算でも計画でもなく“サッカー”なのである。もちろん400億円にも及ぶクラブ全体の年間予算があればこそできるものもあり、そのまま日本サッカーやスポーツに当てはめることはできない。なればこそ、本書の中から各自のジャンルに応用できる部分を見つけ、最適と思われる方法を創造できるかが読者の指導力の見せどころとなるのであろう。
(当初は講談社ランダムハウスより刊行、その後武田ランダムハウスジャパン。現在は、同名の書籍が河出書房新社より刊行されている)
(渡邉 秀幹)
カテゴリ:指導
タグ:サッカー
出版元:武田ランダムハウスジャパン
掲載日:2012-10-16