ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
逆システム学 市場と生命のしくみを解き明かす
金子 勝 児玉 龍彦
“フィットネス”という概念が日本にも紹介されてずいぶん経つと思うのだが、その意味がしっかりと浸透していないなぁと思うことがある。フィットネスとは、何だかわからないけどおしゃれなトレーニングのことなのだろう、という程度にしかとらえられていないと感じるのだ。
僕の職場は公共の体育館である。“フィットネスルーム”もある。やれ空調がどうだとかBGMがどうだとか、色々な要望が寄せられる。どうやら、夏涼しく冬温かい快適な空間で体を動かしたいらしい。
エアロビクスのプロのインストラクターでさえ「暑いから空調をもっと強くしろ」と言ってくる始末である。それは“フィットネス”ではないだろうと個人的には思っている。
“フィットネス”とはすなわち環境に適応する力のことであり、トレーニングはそれを高めるために行うものなのだと思う。では、空調のきいた快適な空間でトレーニングすることが果たして“適応する力”を高めることになるのだろうか。 本書は生命科学や経済学の知識に乏しい僕にとってはかなり難しい本であり、正直、理解できない部分も多かった。だが、キーワードである「多重フィードバック」という考え方は大いに参考になると思った。適応するしくみを多様で複雑なものに進化させることで生存できる可能性を増すのだ。
あるコーチが言っていたトップアスリートの条件を思い出した。「なんでも食えて、いつでもどこでも寝られること」。これも「適応する力」ということなのだろうか。ちょっと違うかな?
(尾原 陽介)
カテゴリ:生命科学
タグ:経済 生命
出版元:岩波書店
掲載日:2012-10-16