ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
スポーツを殺すもの
谷口 源太郎
すべての物事には多面性がある。スポーツも例外ではない。どの立場で関わるのかによって、印象は異なり、感じる問題点も異なる。その問題点を指摘することは簡単であり、それは子どもでもできることだ。
しかしそれが本当に問題なのかさまざまな角度から検証や判断を行い、立場の異なる人々の意見をまとめ、改善してゆくことは非常に困難である。それは子どもにはできない。
オリンピックや世界選手権だけではなく、何らかの代表として選出されることにおいても、全員が満足することは難しいが、それをめざして関係者は努力を進めている。なぜ関係者は苦労をしてそのような努力をするのか。やはりみんなスポーツが好きだからではないだろうか。
この書籍では一般にあまり表に出てこない内容も多く書かれている。それらは確かにある面からみれば問題になる。しかしその面だけではなく多面的に考える必要もあるのではないだろうか。残念ながら私にはこの書籍は、問題点を提起することでスポーツ界をよりよいものにしてゆこうという愛情よりも、それらを書くことでの自己満足感や、スポーツに対する憎しみや嫌悪感が強く感じられる。同じ問題が繰り返されないよう、この書籍を読んだ大人が努力を続けてくれることを切に願う。
(澤野 博)
カテゴリ:その他
タグ:批評
出版元:花伝社
掲載日:2012-10-16