ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
共創とは何か
上田 完次 黒田 あゆみ
著者は東京大学人工物工学研究センターの教授の上田完次さん。本書は「共創工学の展開」と「共創プラットフォーム」のシンポジウムの発表内容や会話をまとめた本である。もちろん工学に関係する内容なので、バリバリ理系の内容や口調が飛び交っていて、ただ何となく読むには難しい本になっている。よって、バリバリ理系“ではない”私なりの解釈を簡単にお伝えする。
本題になっている共創。どうやらざっくり言うと個々では発想やできることに限りがあるが、多くの人の知恵を借りれば可能性が広がるという考え方のようである。しかし、こんなことは誰でも知っており、「何を改まって…」と思ってしまうが、実際に読んでみるとまぁ新しく斬新な考え方だ。何がって…その集めてくる専門家や知識の範囲が非常に広い。もうそれこそ何でも来いというスタンス。しかも、ものの見事に全く関係のないような分野がコラボして、非常に有意義な発想が生まれている。載っている議論の内容がもし読者と全く関係のない場合にも、もっと広い意味でタメになる本だ。
私は性格上、何事にも白黒つけたいタイプである。人間を相手にする職業で、白黒つけようとすればするほど決まってどこかでつまづくジレンマを持っていた。相手は人間であり生き物。わかっている人にとっては当然だし、私も表向きでは理解していたつもりだが、どうしても硬い考え方を崩せないウィークポイントを持っている。しかし、本書にある「共創の考え方」や「別々の物や人、そして事象を共創の観点で上手くコラボさせる具体的な手法とその結果」がとてもよいヒントになった。本当に多種多様のことが書いてあるが、その一部だけでも、これからの私の人生に大きな影響を与えてくれると感じた。
難しいのに、何か自分の生き方を変えてくれるんじゃないかという期待が生まれてしまう一冊。
(宮崎 喬平)
カテゴリ:その他
タグ:共創
出版元:培風館
掲載日:2012-10-16