ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
泳ぐことの科学
吉村 豊 小菅 達男
本書は“泳ぐとは何なのか”をメインテーマとし、“泳ぎ”を科学的に説明するところから始まっている。
各泳法の説明や歴史、その泳法の動作(ストロークやキックなど)が“分節化”して解説してあり、また各泳法を専門とするトップスイマーたちの特徴的な泳ぎ方についても細かく記されている。
ある動作を言葉だけで説明されると、読み手としてはイメージが湧きにくく難しいが、本書は動作の微妙な違いがわかるよう何枚もイラストを並べたり、矢印や線を多用し、イラストとの相乗効果により出来る限り読者がイメージしやすいように配慮されて書かれているのが感じられる。
しかし、これらは筆者が提示したい“ビルド”を解説するうえでの布石に過ぎない。筆者は、今までほぼ“根性論”で成り立っていた泳ぎのトレーニングを、まずは科学的知見を踏まえ分析・分節化し、次に“パズルのピース”状になった1つひとつの動作を組み立て再構築し、できあがったその“一連の動作=泳ぎ方”を繰り返し練習することで個人に合った泳ぎを獲得できると確信しており、この過程を“ビルド”と称し、今後はそれを目指す方向へ指導方法を切り替えていかなければならないと提示している。
そして、筆者はあくまでこの考え方は若者や競技者だけのものではなく、中高年の水泳愛好家たちにも適用できると考えており、本書の後半は中高年のための水泳プログラムなども記載されていて、どの世代が読んでも納得できる内容となっている。
(藤井 歩)
カテゴリ:指導
タグ:水泳
出版元:日本放送出版協会
掲載日:2012-10-16