ATACK NET ブックレビュー
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9回裏無死1塁でバントはするな
鳥越 規央
野球の試合において、セオリーとされている事柄は多いが、はたして合理的理由があるだろうか。こうした疑問に統計学的な観点から答えようとするのがセイバーメトリクスと呼ばれる分野である。
セイバーメトリクスの主な目的は、選手の価値分析、能力評価、将来予測の3つである。これらは球団フロント側ではスカウティングや年俸評価、監督側では試合中の選手起用や戦術立案の理論的裏づけに利用されている。野球の戦術・選手の評価について感覚だけで語ることはもはや古く、セイバーメトリクスではセオリーとされている事柄も合理性のあるものばかりではない。
1点差の9回裏ノーアウト1塁でバントすべきか?「左打者には左投手」は本当に有効か?「バッティングカウント」はあるか? 叩きつけるバッティングはヒットを生みやすいか?…すべて統計による細かなデータの比較で評価していき、数値によって目に見える形で語られるのは面白い。
後半は統計学的に有意かどうかの考察より、著者の評価分析となっているところも多いが、今後踏み込んでいけると面白い内容だと思う。数値や計算など少々難しい内容であるが、野球を別の視点から見たり、セイバーメトリクスに興味がある方にはお勧めの一冊である。
(安本 啓剛)
カテゴリ:その他
タグ:セイバーメトリクス ゲーム分析
出版元:祥伝社
掲載日:2012-10-16