ATACK NET ブックレビュー
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心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣
長谷部 誠
本書は、サッカー日本代表キャプテンを務めた人物の習慣を紹介したものである。これは、トップアスリートの行っている習慣、あるいはリーダーの行っている習慣を紹介したものであるとも言えるだろう。
アスリートにはさまざまなタイプが存在する。身体的才能に恵まれたアスリートもいれば、日々の努力によって、その地位を築いたアスリートもいるだろう。また、リーダーにおいても同様である。強烈なリーダーシップを発揮するリーダーもいれば、フォローワ―シップに長けたリーダーもいるだろう。アスリートやリーダーの数だけ方法論は存在する。
本書は、長谷部選手のキャリアの背景にある経験や学びを通じて、一人の人間としての生き方を学ぶことができる。高校を卒業後、浦和レッズという名門クラブの一員となり、プロスポーツの世界で生きていくことの厳しさを知り、自らの未熟さや弱さを理解したことが心を整えることを考えるきっかけになったようだ。長谷部選手にとって心とは、車で言うところのエンジン、ピアノで言うところの弦であり、整えるということは、調整することや調律するような感覚なのだそうだ。そして、自分を見失うことなく、どんな試合でも一定以上のパフォーマンスができることを目指している。
長谷部選手の言葉を読み取っていき、人間としてのあり方を考えていくと、「なる前にあること」という言葉が浮かんでくる。これは、結果を求める前にプロセスを大切にすることの大切さを説いた言葉である。そして、リーダーとしてのあり方を考えていくと、「一つ上で考え、一つ下で手を動かす」という言葉も浮かぶ。これは、リーダーとは、常に構成員よりも一つ上の次元で物事を考え、構成員と同じ立場で行動にあたるという意味である。両者の底流にある考えは、よりフェアな立場で考えるということだろう。フェアであり続けるということは大変難しいことであるが、それを追求しているからこそ今の姿があるのだろう。本書は、さまざまな観点から考えることによって、多様な気づきを得ることができる良書だと思う。
最後に、ヴォルクスブルクとの契約におけるクラブと長谷部選手の代理人とのエピソードを紹介したい。
「実はハセベのプレーはあまり印象に残っていない。彼のプレーの良さはどこにあるんだい?」
「確かに彼のプレーは目立たないかもしれない。しかし、90分間、マコトのポジショニングを見続けてくれ。そうすれば、どれだけ組織に貢献しているかわかるはずだ。」
後日、クラブはこう連絡してきたという。
「キミの言っていたことがわかったよ。彼は組織に生まれた穴を常に埋められる選手だ。とても考えてプレーしているし、リーグ全体を見渡しても彼のような選手は貴重だ。」
長谷部選手という人物を理解することができるだろう。このように評価される選手は、個人的に好きな選手である。
(南川 哲人)
カテゴリ:人生
タグ:サッカー メンタル
出版元:幻冬舎
掲載日:2012-02-15