ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
子どものからだ 科学的な体力づくり
宮下 充正
副題は「こうすれば科学的に体力がつくられる」といったハウ・ツーを意味しているのではない。体育教育のなかで、科学に基づき、子どもを健全に、発育・発達させようということを広く深くアピールする書である。すでに各紙誌で書評が載せられているので、目を通された人も多いだろう。本書はあとがきによれば『教職研修』(教育開発研究所機関誌)に昭和52年から2年にわたり掲載されたものをUP選書の1冊としてまとめられた。したがって、当初は学校の教師を対象として書かれたわけであるが、通読してみると、ここに述べられ指摘されている問題は、教師に限らず、父兄を含め、諸活動の指導者に大きく関わるものばかりである。受験地獄といわれ、頭ばかり強調され、一方で「落ちこぼれ」などという不快な言葉も取り沙汰されている今日、「近頃の子どもは体力がない」などと大人はどうして他人事のように嘆いていられよう。教師、父兄、指導者はもちろんのこと、誰もが「子どものからだ」について正しい認識を持つ必要性はいくら強調してもしすぎではない。全体を通じ、厳しく鋭い指摘が随所にみられるが、読者はそこに著者の子どもに対する深い愛情を見出さずにはいられないだろう。事実、著者は長年、子どもの野外活動に熱心であり、自ずと本書の説得力も増している。子どもの体育・スポーツに関係する人にはぜひとも一読していただきたい書である。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
カテゴリ:身体
タグ:子ども
出版元:東京大学出版会
掲載日:1980-12-10