ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
水泳と健康 医者からのアドバイス
ジェームス・T・アラダイス 矢野 成敏
月刊トレーニング・ジャーナルで武藤芳照氏が連載「水泳の医学」(単行本としてブックハウス・エイチディより刊行)で水泳の医学面を述べられたが、本書は1972年にイギリスで出された、医師でありコーチでもある著者によるものであり、訳者もまた医師でありコーチで、かつ日本水泳連盟科学技術委員である。
健康とは心身両面から成るものであるが、本書は「第I部からだ」「第II部こころ」の2つに分けられ、両面からスイマーへのアプローチがなされている。
第I部では感染症、月経、貧血、筋肉痛、平泳ぎ膝などスイマーによくある障害について、原因・症状・治療・予防・水泳(泳いでよいかどうか、泳ぐならどうするか)の5項目別に述べられているほか、肥満症、アルコール、喫煙、日射病、ストレス、練習時間などについても有意義なアドバイスが加えられている。
第I部が医師としての立場を中心に書かれているとすれば、第II部はコーチとしての立場から書かれているといえよう。「トップクラスのコーチのすばらしい特徴は、その人の個性である」「優秀なコーチとしての理想的な性格というものはない。(中略)だがそのコーチたちに共通で目立つ点は、スイマーに普通の身体的障害をのりこえさせるような何か電撃的なものを注入する能力である」けだし名言が続く。著者の温かい洞察力が光る書といえる。
ジェームス・T・アラダイス著 矢野成敏訳
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
カテゴリ:スポーツ医科学
タグ:水泳
出版元:績文堂出版
掲載日:1982-08-10