ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
巨人軍のストレッチング
阿野 鉱二
以前、本誌(月刊トレーニング・ジャーナル)にて巨人軍の阿野コーチがストレッチングの本を近く出版するとお知らせしたが、よくまとめられてこの1月に出た。
プロ野球という世界はスポーツ界にあって最も進んでいると思われがちだが、ことトレーニングになると、そうともいえない。長い伝統を有する競技だが、逆にその伝統がある種のブレーキをかけていることもある。
巨人軍の阿野コーチは、プロ野球界にあって、積極的にトレーニング科学を採り入れ、個人的にも勉強熱心なコーチのひとりである。先に本誌で巨人軍のトレーニングを何度か紹介してきたが、それを考え実行しているのも阿野コーチである。デンマーク体操やブラジル体操にストレッチングやエアロビック・ダンス、最新マシーンを用いての筋力トレーニングなどを始め、日常生活における健康管理上のアドバイスも行っている。
その阿野コーチがまとめたこの本は、野球先取のためのものだが、他競技の人がここから方法を学び取ることはたやすく、また価値あることである。全体は「立って行うストレッチング」「座って行うストレッチング」「立ってパートナーと行うストレッチング」「フェンス(壁)利用のストレッチング」「座ってパートナーと行うストレッチング」「日常生活のためのストレッチング」「障害防止とリハビリテーションのためのストレッチング」「巨人の強筋運動」「打撃、投球前に行うストレッチング」の9章から成り、各ストレッチング・ポジションにつき解説、キーポイント、効果の3点が付され、適宜「ワンポイント・メモ」と「巨人軍選手の一言」がカコミで入っている。全頁2色刷で読みやすく、写真のモデルを定岡、篠塚、松本、島貫の各選手と筆者自身が担当しているのも親しみやすい。
ストレッチングは最近になって広く一般にも採り入れられるようになってきたが、こうしてプロの世界で実践されていることが、一冊の本になって、世に広められることはとても望ましいことである。野球は日本人にとって馴染み深いスポーツだけに期待される。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
カテゴリ:ストレッチング
タグ:野球
出版元:ベースボール・マガジン社
掲載日:1983-04-10