ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
汗が演出するサウナ
阿久津 邦男
総じて日本人は風呂好きである。「湯水のように使う」という表現もあるように、極めて贅沢に湯を使う。しかし、内湯が普及するにつれ銭湯は少なくなり、日本人の風呂に対する考え方も昔に比べると変わってきたに違いない。以前「疲労回復」を特集したとき、少し入浴の効果について触れたが、東京オリンピックの年に紹介されたサウナもまた効果の高いものである。この本によればサウナは今や全国に約6500軒、愛好党は1000万人を超す。営業用のみならず、早稲田大学の新しい体育館にもサウナが設けられるなど、スポーツの世界でも珍しくなくなってきた。しかし、サウナの正しい利用法となると、どういうわけか一般には一冊も本がなかったといえる。その意味で、とくにスポーツマン向けに書かれたものではないが、このコーナーで本書を紹介しておきたい。
著者は専修大学教授・医学博士でスポーツの世界でも著名。一般向けに書かれており、イラストやグラフも多用、とれもわかりやすく、早速サウナに行きたくなる本だ。スポーツ疲労の回復に関しても詳しいし、一般生活上のストレス解消や安眠のための利用法、減量、美容についても親切に述べられている。
熱いのを我慢して汗をかき、ビール、マッサージといったワン・パターンの利用しか知らない人、それでもサウナの好きな人、また一度も経験のない人、誰にも楽しく読めて、実用的な本である。元来健康的なものなのに妙な偏見をお持ちの方にもぜひ読んでいただきたい。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
カテゴリ:その他
タグ:サウナ
出版元:人間と歴史社
掲載日:1983-07-10