ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
誰でもわかる動作分析II
小島 正義
動作分析というと、画像を撮り比較分析する手法が多く、設備や機材がないと難しいイメージがある。実際の動作分析で最も大切なことは、「動作をみる」ということだ。動作を見るポイントは、なかなかわかりづらく職人的な気がする。この本はそういった考えを払拭する「動作を見るポイント」が誰でも理解できるように書いてある。
著者である小島氏は作業療法士で、千葉・柏リハビリテーション学院の先生であり、ホームヘルパーの養成課程の講師でもある。前著『誰でもわかる動作分析 ―私もこれで理解できました―』の著者でもある。その続編としてこの本が刊行された。
氏が学生を指導する中で伝えにくい「クラインフォーゲルバッハの概念」をわかりやすく説明するために考えだした「やじろべえの法則」「反対の法則」などさまざまな法則が書かれている。これらの法則を理解すると、動きの本質を理解することができ、調整力、バランス、スタビライゼーションなどをより深く理解することができる。また、介護技術にも利用することができる。
前半部分で、知っておくとよい身体の構造、解剖学用語の説明、動きの法則が書いてある。動作分析をする前の座学といったところである。後半部分で、椅子からの立ちあがり動作を例に、チェック表を用いての記入方法や動作の見方など、動作分析の手法が書かれている。前半の座学に対して、後半は実技に相当する内容が書かれている。本書を読み終えると、動作分析ができるようになっている。
スポーツのスキル指導は、言いかえれば動作指導である。スポーツ障害の予防・治療も動作指導が多く含まれるようになってきた。さまざまな分野で動作についてのより深い理解が必要とされる。今までに、一見して動きの良し悪しを見抜き、適切なアドバイスを送る一流のコーチや指導者、医療関係者に会ったことがある人も多いだろう。そんな人たちに見えている世界がここに書かれている。病院の現場のみならず、動作に関わるスポーツの世界や介護技術に関わる人など、幅広く読んでもらいたい本である。
(服部 哲也)
カテゴリ:スポーツ医科学
タグ:動作分析
出版元:南江堂
掲載日:2012-11-15