ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
水泳療法の理論と実際
宮下 充正 武藤 芳照
編者のひとりである武藤氏には、小社刊の『水泳の医学』という著書があるが、本書は24人の執筆陣によって「医学的治療や予防を目的として水泳を行う場合の指針となるよう」まとめられたもの。全体は16章に分けられ、「水泳運動の特性」「水中運動時の生体内変化」というバイオメカニックな面、運動生理学的な面を冒頭に置き、以下乳幼児、妊婦、喘息児、脳性まひ児、自閉症児、身体障害者、脳神経疾患、心疾患児、循環器疾患、呼吸器疾患、骨・関節疾患、皮膚疾患、健康と体力の保持・増進のための水泳、そして水泳中に発生する疾病と事故の原因といった章が続く。図表、写真もよく整理され、各章における水泳療法について「その適応と禁忌、目的(意義)、効果、国内外における現況、指導手順、注意と問題点等が理解されやすいよう」(序)配慮されている。
水泳は、競技スポーツやレクリエーション・スポーツ、教育のためのスポーツのみならず、このように、健康・体力の保持・増進、疾病・障害の治療・予防に用いられている。読者も新聞、雑誌、テレビなどでさまざまな水泳の現場を垣間みたことがあることだろう。しかし、これまではこのように、1冊にまとまったテキストがなく、水泳療法の全体を捉えることが難しかった。本書の刊行により、一般臨床医はもちろんのこと、運動生理学やスポーツ医学の研究者、そして現場で指導にあたる水泳指導者、社会体育関係者などが正しく水泳療法の理論と実際を把握できるようになったといえよう。
競技レベルにおいてもこれらの知識を有していることは有益だろう。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
カテゴリ:スポーツ医科学
タグ:水泳療法
出版元:金原出版
掲載日:1984-07-10