ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
体育とはなにか 改めて問う 体育の内容と本質
宮下 充正
東京大学での大学院時代から数えて、体育学に入って25年という著者が、海外研修を前にして、自分自身の反省材料としてそれまでの文章を書き改めながらまとめ直したものであり、「体育にこれからたずさわろうとする若い人びとに読まれ、新しい世紀での活躍に役立てば」という願いもあって刊行となった。
歯に衣着せぬ口調は深い洞察を感じさせ、読中・読後とも、改めて体育学とは何かを考えさせられる書で、体育に関わる人々にはぜひとも一読しておいていただきたいものである。
「(前略)すなわち、体育学は応用科学としてのその存在を世に示すことができるのである。それゆえ、私たちは、世間があっと驚くような新しい研究を追い求める必要はなく、着実に事実を積み重ねていくよう努力すべきではないかと、私は思っている」(第3章体育学はなにをしてきたのか、P55より)
「そこで私は次のようなことを提案したい。親と旅行する場合は、学校を休んでも欠席あつかいとしない、ということである。一週間分の学習予定を先生からもらって、それにしたがって親が教育の代替えをするという制度である」(第9章季節に感じる運動の必要性、P153より)
「それではスポーツ科学は万能か、科学だけで勝てるのだろうか。決してそんなことはないといえる。理屈はしょせん理屈であって、それ以上のものではない。私どもは基礎的な平均データを提供するが、それを生かすも殺すもコーチと選手しだいである」(第10章新しいスポーツ科学について、P185より)
日本の選手を強くしたい、勝たせたいという夢を抱く著者は、水泳を初めとし、各競技に熱心に取り組んできた。研究、実践を通じての明晰さに副題が光る書である。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
カテゴリ:スポーツ医科学
タグ:体育
出版元:大修館書店
掲載日:1984-11-10