ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
現場で役立つスポーツ損傷ガイド 診断、治療、復帰まで―
鳥居 俊
本書の印象を一言で言うならば、ずばり“The・シンプル”である。
複数の著者の原書を複数の日本のスポーツ医学の専門家が項目ごとに翻訳しているが、とくに前半に関してはどの著者も非常に説明が詳しく丁寧でわかりやすい。一例が多く挙げられ、回数や時間が記載されたものもあり非常に具体的である。
また、参考文献・参考資料の紹介もところどころに載せられてあり、読者が詳細を知る上で検索するのにとても有効である。
まさに、どんな知識レベルの人でもわかるよう幅広い読者を想定して書かれた大衆的な一冊であると言える。
一方、ここは意見が分かれるところではあるが、監訳者も述べているように、本書は多くの選択肢を敢えて避け、シンプルさ・使いやすさを一番に考えて書かれている。それゆえ、どうしても“浅く広い”知識というイメージが強い。
たとえば各部の損傷の項目では、「対応・治療」と「競技復帰」の間に入ってくるアスリハに関しての情報が少ない、「確認・診断」の基準が曖昧・説明不足なものが多い(スペシャルテストなど)といったように、全体的にコンパクトにまとまりすぎて内容が薄く感じられる。読者の中には物足りなささえ感じる人もいるであろう。
しかし、その点を考慮しても、本書はスポーツ損傷への入り口として、また緊急時など早急に対応すべきときに傍らに置いておきたい一冊として申し分ないガイドブックとなっている。
(藤井 歩)
カテゴリ:スポーツ医科学
タグ:ケガ
出版元:ナップ
掲載日:2012-11-27